副業・フリーランスの確定申告は必要?20万円ルール・住民税・申告しない場合のリスク
結論から言うと、給与を1か所から受けていて年末調整が済んでいる会社員は、副業の「所得」(売上−経費)が年20万円以下なら、所得税の確定申告は原則不要です。ただし、判断基準は売上ではなく所得であること、所得税の申告が不要でも住民税の申告は別に確認が必要なことには注意してください。
給与がない専業のフリーランスや、勤務先が2か所以上ある人、20万円を超える人は、別の判定になります。この記事では、判断の順番、所得と売上の違い、ココナラなどの売上の扱い、申告しなかった場合に起こりうること、令和8年分(2027年に申告)の期限を、国税庁の公表情報(2026年10月8日確認)にそって整理します。
確定申告が必要かを決める3つの質問
「副業で稼いだら確定申告」と言われますが、実際には人によって結論が変わります。まず次の3つに答えると、判断の入口が見えます。
- 給与をもらっていますか?(会社員・パートなど)
- 給与の支払元は1か所ですか、2か所以上ですか?
- 給与以外の所得(売上−経費)はいくらですか?
国税庁のタックスアンサーNo.1900は、多くの給与所得者は勤務先の年末調整で所得税が確定するため確定申告は不要とし、そのうえで申告が必要なケースを挙げています。副業と関係が深いのは次の3つです。
- 勤務先が1か所で給与の全額が源泉徴収されている人:給与所得と退職所得以外の所得の合計が20万円を超える場合は申告が必要です。
- 勤務先が2か所以上の人:年末調整されなかった給与の収入金額と、その他の所得の合計が20万円を超える場合は申告が必要です。
- 給与収入が年2,000万円を超える人:副業の額にかかわらず申告が必要です。
なお、同じページには「確定申告をすれば還付を受けられる人は対象外」との整理も書かれています。つまり、申告が義務かどうかと、申告したほうが得かどうかは別の話です。後者は後半で触れます。
| あなたの状況 | 所得税の申告の目安 |
|---|---|
| 会社員(勤務先1か所)で、副業の所得が20万円以下 | 原則不要(住民税は別に確認) |
| 会社員(勤務先1か所)で、副業の所得が20万円超 | 必要 |
| 勤務先が2か所以上 | 条件により必要。国税庁の判定表を確認 |
| 給与収入が2,000万円超 | 必要 |
| 給与がない専業のフリーランス | 所得が所得控除の合計を超えれば原則必要。還付目的でも申告は有効 |
専業の場合は「20万円ルール」の対象ではありません。この点は取り違えやすいので、最初に押さえておいてください。診断は確定申告・開業届 診断でも試せます。
基準は売上ではなく「所得」:20万円ルールの数え方
20万円ルールの「20万円」は、売上(収入)ではなく所得のことです。所得は、売上から、その仕事のために使った必要経費を引いた金額です。
具体例で見る
- 売上が年間45万円、経費が28万円 → 所得は17万円。20万円以下なので、所得税の申告は原則不要です。
- 売上が年間45万円、経費が15万円 → 所得は30万円。20万円を超えるので、申告が必要です。
- 売上が年間18万円、経費がゼロ → 所得は18万円。申告は原則不要です。
売上が100万円あっても、経費が85万円なら所得は15万円です。逆に、売上が30万円でも経費が少なければ20万円を超える場合があります。「売上が20万円を超えたから申告」と短絡的に考える必要はありませんが、経費として認められる範囲は事実にもとづくものです。仕事に関係ない支出を混ぜて所得を減らすことはできません。経費の考え方は経費になる・ならないの判定ツールで確認できます。
20万円に含まれないもの
国税庁によると、上場株式の配当などで確定申告をしないことを選んだもの、特定口座(源泉徴収あり)の譲渡益で申告しないことを選んだもの、預貯金の利子のような源泉分離課税のものなどは、この20万円の合計に含まれません。投資の所得がある人は、副業の所得とは分けて考えます。
副収入の所得区分
国税庁のNo.1906には、ネットオークションやフリマアプリでの取引、暗号資産の売却、民泊、NFTの譲渡などの副収入は多くが雑所得に当たると書かれています。また、生活に使っていた古着や家財の売却は非課税で、確定申告も不要とされています。
所得税の申告が不要でも、住民税の申告は別に確認する
ここが、会社員の副業で最も見落とされやすい点です。所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要になる場合があります。
国税庁のタックスアンサーNo.2020には、対象税目は所得税のみで、住民税・事業税の扱いは別の資料で確認が必要という趣旨しか書かれていません。そこで自治体の案内の一例として川口市の資料を確認したところ、給与・年金以外に所得(副業など)があれば住民税の申告の対象になり、そのうち20万円を超える場合は所得税の確定申告も必要、とされていました。ここでの案内は自治体ごとに異なる場合があります。
住民税の申告で気をつけたい点
- 申告先:所得税は税務署、住民税はお住まいの市区町村です。確定申告書を提出すれば、その内容は市区町村にも共有されるので、別に住民税の申告書を出す必要はないのが一般的です。
- 副業が勤務先に伝わるか:住民税の徴収方法(給与から天引きされる特別徴収か、自分で納める普通徴収か)の選び方が影響する場合があります。取り扱いは自治体や勤務先の運用で異なるため、申告書の記載欄や市区町村の窓口で確認してください。
- 勤務先の副業ルール:税金の話とは別に、就業規則で副業が制限されていないかも確認しましょう。
- ふるさと納税のワンストップ特例:確定申告や住民税申告をすると、ワンストップ特例は無効になり、寄附金控除を申告に含める必要があると川口市の案内にも書かれています。
ココナラ・note・クラウドソーシングの売上はどう扱う?
ココナラ、note、クラウドソーシングなどの売上も、他の副業と同じように所得計算の対象です。プラットフォームを通した収入だから特別に非課税、ということはありません。次の点を押さえておくと、計算ミスを防げます。
入金額と売上は一致しないことが多い
ココナラのように販売手数料が差し引かれる場合、振り込まれる金額は購入者が支払った金額より少なくなります。一般的には、手数料引き前の金額を売上、手数料を経費(支払手数料)として整理します。入金額だけを売上にすると、売上が小さく見えて判定を誤りやすくなります。ココナラの手数料の仕組みはココナラの手数料の記事で整理しています。会計上の細かい処理は、税務署や税理士に確認してください。
源泉徴収されている場合
業務委託の報酬は、取引先の側で源泉徴収されている場合があります。この場合は、申告をすることで源泉徴収された税額が精算されます。仕組みは源泉徴収とインボイスの記事も参考にしてください。
事業所得か雑所得か
副業の所得は、事業として行っていれば事業所得、そうでなければ雑所得になります。国税庁のNo.1350では、事業所得は「事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得」とされています。No.1500では、雑所得のうち副業に係るもので営利を目的とした継続的なものは「業務に係る雑所得」に区分され、雑所得で生じた損失は他の所得と損益通算できないとされています。
| 事業所得 | 雑所得(業務に係るもの) | |
|---|---|---|
| 損益通算 | できる | できない |
| 青色申告の特別控除 | 要件を満たせば利用できる | 利用できない |
| 区分の考え方 | 事業の実態による総合判断 | 営利目的の継続的な副収入など |
どちらに当たるかは、収入の規模だけで決まるものではありません。迷う場合は税務署か税理士に相談してください。区分の違いと青色申告の関係は青色申告と白色申告の記事で詳しく説明しています。
帳簿・記録の保存
国税庁のNo.2080では、業務に係る雑所得があり、前々年分の収入金額が300万円を超える人は、現金預金取引等関係書類を5年間保存する必要があるとされています。確定申告書への収支内訳書などの添付は、前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が1,000万円を超える人が対象です。副業の規模が小さいうちから、売上と経費を記録する習慣をつけておくと、いざ申告するときに困りません。
申告しないとどうなる?無申告のリスク
申告が必要なのに期限までに出さなかった場合、国税庁のNo.2024では、気づいた時点でできるだけ早く期限後申告をするよう案内されています。期限後申告では、納めるべき税金が増える可能性があります。
無申告加算税の率
国税庁のNo.2024に書かれている無申告加算税の率は、次のとおりです(令和5年分以降)。
| 状況 | 率の目安 |
|---|---|
| 税務署の事前通知より前に、自主的に期限後申告した | 納付すべき税額の5% |
| 事前通知後、調査による決定を予知する前に期限後申告した | 50万円まで10%、50万円超300万円まで15%、300万円超25% |
| 調査を受けたあと、または決定を受けた | 50万円まで15%、50万円超300万円まで20%、300万円超30% |
さらに、次の3つをすべて満たす場合は無申告加算税がかかりません。
- 法定申告期限から1か月以内に自主的に申告している。
- 納付すべき税額の全額を法定納期限までに納付している(口座振替の場合は期限後申告書を提出した日)。
- 過去5年のうちに無申告加算税または重加算税を課されたことがない、など所定の要件に当てはまる。
無申告加算税のほかに、延滞税も別にかかります。期限後申告で納める税金は、申告書を提出した日が納期限になります。
売上の帳簿を残していない場合
国税庁のNo.2080によると、令和5年分の確定申告に対する修正申告等から、売上の帳簿を保存していない場合や、売上の記載が不十分な場合は、税務調査で把握されたときに過少申告加算税・無申告加算税の割合が5%または10%加重されます。記録を残すことは、リスクの軽減にもつながります。
「バレるかどうか」より「後から困るか」で考える
申告しなかった副業がどう発覚するか、という話はよく見かけますが、ここでは扱いません。重要なのは、必要な申告をしないと、あとから加算税や延滞税を含めて払う可能性があること、そして期限後でも早く申告するほど負担を抑えられる場合があることです。気づいたら、まずは税務署に相談して、期限後申告の手続きを進めましょう。
申告したほうがよい場合:義務ではなくても
20万円以下で申告が義務でなくても、次のようなケースでは申告が有利になる場合があります。
- 報酬から源泉徴収されている:所得が小さい年は、源泉徴収された税金が申告で戻る場合があります。
- 医療費控除、住宅ローン控除の初年度など:会社の年末調整では対応できない控除です。
- 副業が赤字で、青色申告の損失繰越を使いたい:青色申告者は、赤字を翌年以後3年間繰り越せます。詳細は青色申告の記事を参照してください。
- 国民健康保険や各種手当の手続き:所得の証明が必要になることがあります。
これらは申告の義務ではなく、あなたが選ぶものです。条件に当てはまるかどうかは、診断ツールのチェック項目で確認できます。
令和8年分の申告期限とスケジュール
今日は2026年10月8日です。令和8年分(2026年1月〜12月の所得)の確定申告は、2027年に行います。国税庁のNo.2020では、申告期間は原則として翌年2月16日から3月15日まで、申告と納付の期限は原則として翌年3月15日と書かれています。実際の受付開始日や、土日にかかる場合の取り扱いは、令和8年分の確定申告特集(国税庁が公表予定)で確認してください。
- 今のうちにできること(10月〜12月):売上と経費の集計、領収書の整理、年内に払う経費の確認。
- 年明け(1月):支払調書や源泉徴収票、各種控除証明書の収集。
- 申告期間(2月16日以降):国税庁の確定申告書等作成コーナーなどで作成し、提出と納付。
納税額の準備は、税金の積立額ツールや税金・手取り概算ツールで目安をつかめます。ほかの税の期限は税金カレンダーで確認できます。
まず何をするか:5ステップ
- 今年の売上と経費を、日付つきで一覧にする。プラットフォームの売上履歴、通帳、カード明細から集めます。
- 所得(売上−経費)を計算する。手数料は経費として整理します。
- 自分の区分を確認する。給与あり・勤務先1か所・所得20万円超かどうか、または専業かどうか。
- 所得税の申告が不要でも、住民税の申告を市区町村に確認する。
- 申告するなら、期限(2027年3月15日が原則)から逆算して準備する。
よくある質問のまとめ
売上が20万円を超えたら申告が必要ですか?
いいえ。20万円ルールは所得(売上−経費)が基準です。売上が20万円を超えても、経費を引いた所得が20万円以下なら、会社員(勤務先1か所)の所得税の申告は原則不要です。ただし住民税は別に確認してください。
専業のフリーランスにも20万円ルールはありますか?
20万円ルールは、給与所得者向けの整理です。給与がない専業の場合は、所得から所得控除を引いて税額が出るかどうかで考えます。所得控除の額は年分や状況で異なるため、国税庁の案内か診断ツールで確認してください。
申告を忘れていたと気づきました。
国税庁は、気づいた時点でできるだけ早く期限後申告をするよう案内しています。事前通知前に自主的に申告し、条件を満たせば、無申告加算税が5%になる、または課されない場合があります。早めに税務署に相談しましょう。
開業届は必要ですか?
開業届は、事業を始めたことを税務署に伝える届出です。確定申告の要否とは別の手続きで、青色申告を選ぶ場合は別途の申請書が必要です。提出期限や罰則の有無などの詳細は、国税庁のNo.2090と税務署の案内で確認してください。
※この記事は一般的な情報の整理であり、個別の税務判断を行うものではありません。迷う場合は税務署または税理士に相談してください。