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会社員が副業を始める前の確認事項|就業規則・労働時間・所得区分・開業届・扶養

結論から言うと、副業を始める前に最初に確認するのは、税金ではなく勤務先の就業規則です。許可制・届出制・禁止のどれなのか、本業と競合しないか、労働時間が長くなりすぎないかを確認してから、収入の区分や開業届の要否を考えるほうが、順番として安全です。

この記事は、会社員が副業を始める前の確認事項を、チェックリストの形で整理します。厚生労働省の副業・兼業のガイドライン、国税庁のタックスアンサー、自治体の案内(2026年10月13日確認)で確認できた範囲だけを具体的に書き、確認できなかったことは「公式で確認を」と明記します。申告や開業届の詳細は、すでにある記事へのリンクで済ませ、ここでは「出す前に何を見るか」に絞ります。

公開:2026-10-13|最終確認:2026-10-13|約6900字

副業を始める前の確認事項:全体チェックリスト

副業を始める前に確認することは、大きく3つの領域に分かれます。順番も大事なので、先に表にまとめます。

順番領域確認すること相談先
1会社との関係就業規則の副業の条文、許可制・届出制、競業・秘密保持人事・総務
2働き方副業が雇用か、業務委託などか。労働時間の通算、健康への影響人事・総務、労働基準監督署の相談窓口、社会保険労務士
3税金所得の区分、申告の要否(所得税と住民税は別)、開業届・青色申告の要否税務署、市区町村、税理士
4社会保険・扶養自分の加入状況、家族の扶養との関係加入している健康保険、年金事務所、人事・総務

税金の話題は検索すると多く出てきますが、会社の規則に反した状態で副業を始めてしまうと、あとから税務を整えても解決しない問題が残ります。最初に会社の規則、次に働き方、そのあとで税金と社会保険という順で確認するのが、手戻りの少ない進め方です。

なお、会社に副業が知られる原因や、住民税の特別徴収・普通徴収については、副業が会社に知られる原因と確認することで詳しく整理しています。この記事では、そこに入る前の準備に絞ります。

就業規則を確認する:許可制・届出制・禁止の違い

最初にやることは、自分の会社の就業規則(または服務規程)を読み、副業・兼業・競業・秘密保持・懲戒に関する条文を確認することです。厚生労働省の副業・兼業のページによると、国は副業・兼業を促進する方向で、ガイドラインを平成30年1月に策定し、令和4年7月に改定しています。モデル就業規則も、平成30年1月の改定で、許可なく他社の業務に従事しないことを定めた規定を削除し、副業・兼業に関する規定を新設したと説明されています。

ただし、これは国が示すモデルであり、実際の就業規則は会社ごとに異なります。会社の規則は、おおよそ次のどれかに分かれます。

類型意味やること
原則自由届出なしで可能。ただし競業や秘密保持などの制限はある制限事項を読み、該当しないか自分で点検する
届出制副業を始める前(または始めたあと)に会社へ届け出る様式、提出先、提出時期、記載内容を確認する
許可制会社の許可を得てから始める申請の手順、審査の観点、許可までの期間を確認する
禁止副業を認めない始める前に人事・総務に例外の有無を確認する。自己判断で始めない

厚生労働省の掲載ページには、「副業・兼業に関する届出様式例」が載っており、企業が労働者の申告にもとづいて副業の内容を確認する際の参考様式として紹介されています。会社がこのような様式を使っているかどうかは、会社によります。

確認するときの質問例

  • 副業は許可制か、届出制か、それとも禁止か。
  • 許可や届出が必要なのは、雇用(アルバイト)だけか、業務委託・ネット販売・コンテンツ販売なども含むか。
  • 許可や届出の時期は、始める前か、収入が出たあとか。
  • 副業の内容や収入額、勤務時間を、どこまで申告する必要があるか。
  • 規則に反した場合の懲戒の定めはあるか。

規則が分かりにくいときや、運用が条文と違うように見えるときは、人事・総務に聞くのが確実です。聞きにくい場合は、労働基準監督署の総合労働相談コーナーや、社会保険労務士など外部の専門家に相談する方法もあります。

会社に確認せずに、インターネット上の一般論だけで「問題ない」と判断するのは避けてください。規則の有無・内容は、会社ごとに違います。

本業との競合・情報漏えい・信用の問題

許可制や届出制でなくても、副業が会社の利益や信用に影響する場合は、制限される可能性があります。厚生労働省のガイドライン概要には、企業が副業・兼業を制限できる場合として、次の4点に支障がある場合が挙げられています。

  • 安全配慮義務:長時間労働などで、本人の健康に影響が出る場合。
  • 秘密保持義務:業務上の秘密が漏れるおそれがある場合。
  • 競業避止義務:本業と競合して、会社の利益を害する場合。
  • 誠実義務:会社の信用や名誉を損なう行為などがある場合。

これを自分の副業に当てはめるには、次のような点検が役に立ちます。

  • 取引先が重なっていないか:本業の顧客や取引先に、副業としてサービスを売ることは、競業と見られやすい典型です。
  • 本業で得た情報や資料を使っていないか:顧客リスト、社内の資料、ノウハウなどを副業に流用すると、秘密保持の問題になりえます。
  • 本業の勤務時間・会社の設備を使っていないか:就業時間中の作業や、会社のパソコン・メールアドレスの使用は、避けるのが無難です。
  • 会社名や肩書きを出していないか:副業の発信で勤務先が分かる形になると、信用の問題につながる場合があります。
  • 副業の内容が会社の評判に影響しないか:業種や内容によっては、会社が懸念する可能性があります。

どこまでが競業にあたるかは、会社の業種や規則、副業の内容で変わります。ここで挙げたのは考え方の例であり、該当するかどうかの最終判断は、会社や専門家に確認してください。

労働時間の通算:副業が雇用か、そうでないかで変わる

副業が別の会社での雇用(アルバイトなど)の場合は、労働時間の扱いに注意が必要です。厚生労働省のQ&Aによると、労働基準法第38条第1項は「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と定めており、事業主が異なっても、原則として労働時間は通算されます。

副業の形労働時間の通算
別の会社に雇用される(アルバイト・パートなど)通算される。本業と副業の労働時間を合わせて、法定労働時間などの規制が適用される
フリーランス・個人事業主として働く、請負・委任厚生労働省のQ&Aでは、労基法が適用されない働き方(フリーランス、事業主、顧問、会社役員など)は通算する必要がない、と整理されている

通算の対象になる場合、ガイドライン概要には次のような整理があります。

  • 法定労働時間と、時間外労働の上限規制(単月100時間未満、複数月平均80時間以内)は、通算して適用される。
  • 副業先での労働時間は、労働者の自己申告などによって把握することとされている(令和2年9月1日の通達)。
  • 通算した結果、時間外労働になる部分は、その時間を働かせた会社が割増賃金を支払う必要がある。
  • 簡便な方法として「管理モデル」があり、それぞれの会社で上限を決めて管理する。

つまり、雇用での副業は会社側にも管理の義務が生じるため、会社が許可制・届出制にしている背景には、この通算の管理があります。自営型の副業では通算の対象外とされていても、長時間の副業で健康を害したり、本業に支障が出たりすれば、前の章の「安全配慮」の面で問題になりえます。

副業にかける時間は、案件別タイムトラッカーのような簡単な記録でもよいので、最初から把握しておくと、会社への説明や自分の健康管理に役立ちます。

労災について

厚生労働省のガイドライン概要には、複数の事業場で働く人の労災保険について、災害が起きなかった事業場の賃金も合算して給付を計算すること、複数の就業先での業務の負荷を総合的に評価して認定することなどが書かれています。雇用で副業をする場合の補償の扱いは、この制度の対象になるかを含めて、労働基準監督署に確認してください。

税金の確認:20万円以下でも住民税の申告は別、所得区分も確認

税金の面で、会社員の副業で最も誤解されやすいのが「20万円以下なら何もしなくてよい」という理解です。国税庁のタックスアンサーNo.1900(令和8年4月1日現在の法令等)では、給与を1か所から受けていて、その全部が源泉徴収の対象である人は、給与所得と退職所得を除く各種所得の合計額が20万円を超える場合に、確定申告が必要とされています。

ここでいう20万円は所得(売上から経費を引いた額)であり、売上や入金額ではありません。また、これは所得税の話です。住民税の申告は別に確認が必要です。

  • 横浜市のページでは、給与を1か所から受けていて、給与以外の所得の合計が20万円以下の人は、所得税の確定申告は原則不要でも住民税の申告は必要、とされています。
  • 広島市のページにも、給与以外の所得が20万円以下で所得税の確定申告が不要な場合も、住民税の申告が必要、という趣旨の記載があります。

市区町村によって細かい案内は異なる場合があるため、お住まいの市区町村の住民税の担当窓口で、自分の場合の申告の要否と手続きを確認してください。所得税の申告の詳しい判断、売上と所得の違い、申告しない場合のリスクは、副業の確定申告ガイドで整理しています。確定申告の要否チェックツールでも目安を確認できます。

副業の所得は、売上ではなく所得で見る

副業を始める前に、次の点を意識しておくと、あとの記録が楽になります。

  • 売上、経費、入金、プラットフォーム手数料などを、日付つきで記録する。
  • 経費にできるものとできないものを、経費判定ツールや経費の記事で確認する。
  • 副業用の口座や決済手段を分けて、生活費と混ざらないようにする。

事業所得か雑所得か:収入の区分で扱いが変わる

副業の所得は、大きく分けて事業所得か雑所得(業務に係る雑所得)のどちらかになることが多く、区分によって使える制度が変わります。

項目事業所得雑所得(業務に係るもの)
赤字の損益通算他の所得と通算できる場合がある(制度の要件は税務署で確認)損失は他の所得と損益通算できない(国税庁No.1500)
青色申告対象になりうる対象外(青色申告ができるのは事業所得などがある人。詳しくは青色申告の記事)
記帳・帳簿書類の保存記帳と保存の義務がある前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える場合は、現金預金取引等関係書類の保存が必要(国税庁)

どちらに当たるかは、収入の額だけでは決まりません。国税庁の所得税基本通達の注では、事業所得と雑所得の区分は、その所得を得るための活動が社会通念上「事業と称するに至る程度」で行われているかどうかで判定する、とされています。また、その所得に係る取引を記録した帳簿書類がない場合は、原則として業務に係る雑所得になる、という趣旨の整理もあります。ただし、収入金額が300万円を超え、かつ事業所得と認められる事実がある場合は例外とされています。

一方、国税庁のタックスアンサーNo.1350には、事業所得か否かを判断する具体的な基準(営利性、継続性など)は書かれていませんでした。境界が微妙な場合は、自己判断で決めつけず、税務署や税理士に確認してください。

始める前にできる「事業に近い形」の準備

  • 収支を記録した帳簿を、最初からつける(記録がないと、原則として雑所得になる、という国税庁の整理があります)。
  • 継続して営利目的で行う意思と実態があるかを、自分で整理しておく。
  • 区分に迷う場合は、早めに税務署の相談窓口を使う。

なお、雑所得の収入が300万円以下の場合の現金主義の特例など、細かい扱いは国税庁No.1500に記載があります。該当しそうなときは原文で確認してください。

開業届・青色申告を出す前に確認すること

開業届と青色申告承認申請書は、副業を始めたらすぐに出すもの、と思われがちですが、会社員の場合は、先に確認すべき点があります。出し方や期限は開業届の記事、青色申告の控除の条件は青色申告の記事にまとめてあるので、ここでは「出す前に見ること」だけに絞ります。

  1. 会社の許可・届出が済んでいるか。開業届を出すかどうかの前に、副業そのものが会社の規則に沿っているかを確認します。
  2. 自分の副業が、事業と呼べる実態になっているか。継続性、反復性、帳簿の有無などです。単発の少額収入で、事業というほどの実態がまだない段階なら、急がなくてもよい、という整理が一般的です。
  3. 青色申告のメリットを使えるか。青色申告ができるのは、事業所得などがある人です。副業が雑所得にとどまるなら、青色申告承認申請書を出しても、その所得には使えません。
  4. 記帳の負担を受け入れられるか。青色申告の特別控除を受けるには、帳簿のつけ方などの条件があります。毎年続けられるかも判断材料です。
  5. 期限を確認する。青色申告承認申請書の期限は、開業届の期限より先に来ることがあります。具体的な期限は、開業届の記事か国税庁のページで確認してください。

開業届を出したからといって、それだけで税金が安くなるわけではありません。また、開業届の提出と会社への知られ方は直結するわけではありませんが、無関係とも言い切れません。先に就業規則の確認を済ませ、そのうえで、自分の副業の実態に合わせて出すかどうかを決めるのが、順番として安全です。節税の目安は節税手段の比較ツールでも確認できます。

社会保険・扶養の注意

副業を始めると、社会保険や扶養の面で影響が出る場合があります。制度の見直しが続いている分野なので、ここでは確認できた範囲だけを書き、詳細は加入先に確認してもらう形にします。

自分が会社の健康保険に入っている会社員の場合

本業で会社の社会保険に加入している会社員が、自営型の副業(業務委託、ネット販売など)で収入を得ても、一般に、その副業の収入だけで本業の社会保険の扱いが大きく変わることは少ないと考えられます。ただし、副業が雇用で、別の会社でも社会保険の加入条件に達する場合は、手続きが必要になる可能性があります。今回確認した公式の資料では、複数の事業所で働く場合の社会保険の具体的な適用要件は確認できませんでした。雇用で副業をする場合は、会社の担当者か年金事務所、加入している健康保険に確認してください。

家族の扶養に関わる場合

会社員自身が家族の扶養に入っているケースは多くありませんが、副業を始める人が、配偶者や親族の扶養の範囲に関わる場合、たとえば、パートの人が副業をする、学生や若い世代が副業を始める、といったケースでは、収入の増加が影響することがあります。

  • 協会けんぽのページによると、健康保険の被扶養者の認定は、原則として年収130万円未満が目安とされています。60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者は180万円未満、19歳以上23歳未満(配偶者を除く)は150万円未満という基準も示されています。
  • 同じページには、人手不足による一時的な収入増加の特例や、労働契約の内容による判断の特例が書かれています。これらは給与収入を前提とした説明で、事業収入や自営業の収入をどう扱うかは、確認したページには記載がありませんでした。

つまり、副業の収入が事業収入や雑所得になる場合に、扶養の収入判定でどう数えるかは、健康保険ごとに運用が異なる可能性があり、今回の確認では分かりませんでした。扶養に入っている人、扶養している人のどちらも、副業を始める前に、加入している健康保険(協会けんぽ、健康保険組合、国民健康保険など)に確認してください。

税金の扶養控除や配偶者控除の判定も、所得額が関わります。年度や制度の見直しで基準が変わることがあるため、最新の基準は国税庁の案内で確認し、迷う場合は税務署か勤務先の年末調整の担当者に聞いてください。2026年に社会保険の適用拡大などの制度見直しが話題になっていますが、今回確認した公式の資料ではその詳細を確認できなかったため、この記事では断定しません。

まとめ:まず何をするか

この記事の要点を整理します。

  • 副業を始める前に最初に見るのは、就業規則。許可制・届出制・禁止のどれかを確認する。
  • 本業との競業、情報漏えい、会社の信用への影響がないかを、自分で点検する。
  • 副業が雇用なら労働時間が通算される。フリーランスなど労基法が適用されない働き方は、通算の対象外と整理されている。
  • 所得税の申告が不要な20万円以下(所得)でも、住民税の申告は別に確認が必要。
  • 事業所得か雑所得かは、社会通念上、事業と称する程度かなどで判断される。帳簿がないと原則として雑所得とされる。
  • 開業届・青色申告は、会社の規則の確認と、実態の確認のあとで検討する。
  • 社会保険・扶養は、加入先に確認する。事業収入の扱いは今回の確認では不明。

今日からできる行動は、次の5つです。

  1. 就業規則を読み、副業・競業・秘密保持・懲戒の条文を確認する。不明点は人事・総務に聞く。
  2. 副業の形を決める。雇用か、業務委託・販売などか。
  3. 本業と競合しないか、情報を使っていないかを点検する。
  4. 収支を記録する仕組みを最初から作る。売上、経費、日付、入金を分けて記録する。
  5. 申告の時期を確認する。期限は税金カレンダーで確認できます。手取りや税額の目安は税金・手取り概算ツールで試算できます。

※この記事は、公式情報を一般論として整理したものであり、個別の税務・労務の判断を行うものではありません。具体的な扱いは、勤務先、税務署、市区町村、加入している健康保険、税理士・社会保険労務士などの専門家に確認してください。

本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、個別の税務・法律相談ではありません。制度は改正されることがあるため、実際の判断は国税庁などの公式情報や、税理士などの専門家にご確認ください。