税金と社会保険のために毎月いくら取っておく?フリーランスの納税資金と納付スケジュール
結論から言うと、納税のために取っておく額は、売上ではなく「所得」から逆算して決め、売上が入るたびに一定割合を別口座へ移すのが最も続けやすい方法です。目安は、専業でおおむね売上の2割前後から。ただし、経費の多さ・青色申告の控除・国民健康保険料・消費税の有無で大きく変わるので、あくまで出発点です。
会社員と違い、フリーランスの税金や保険料は天引きされません。しかも住民税と個人事業税は、前年の所得をもとに翌年に請求されます。この記事では、払うものの全体像と納付時期、計算の手順、副業の会社員の場合の違いを、国税庁などの公表情報(2026年10月8日確認)にそって整理します。
フリーランスが払うものと、納付時期の全体像
会社員は、所得税・住民税・社会保険料が給与から天引きされます。フリーランスは売上を全額受け取り、その後に請求書や納付書が届きます。払うものは、大きく分けて次の6つです。
| 項目 | 納付の時期(目安) | 備考 |
|---|---|---|
| 所得税(予定納税) | 7月・11月 | 前年の予定納税基準額が15万円以上の人のみ |
| 所得税(確定申告) | 翌年3月15日まで(原則) | 申告期間は原則2月16日〜3月15日 |
| 消費税 | 翌年3月31日まで(個人事業者) | 課税事業者のみ |
| 住民税 | 翌年6月から。年4回に分ける方法が多い | 自治体の納税通知書で確認 |
| 個人事業税 | 8月と11月が標準(東京都は8月末・11月末) | 対象業種で、所得が一定額を超える場合のみ |
| 国民年金 | 毎月(翌月末まで) | 令和8年度は月額17,920円 |
| 国民健康保険 | 自治体の納期(通知書で確認) | 保険料は自治体ごとに異なる |
今は2026年10月。予定納税の対象になる人は、第2期の11月1日〜11月30日の納付が目前です。年間の予定は税金カレンダーでカレンダーに入れておくと、納付月に慌てずに済みます。
「あとから来る」税金が多い
特に注意したいのは、住民税と個人事業税です。どちらも前年の所得をもとに、翌年に請求されます。東京都主税局のページでも、住民税の所得割は前年の所得金額に応じて課税されると説明されています。会社を辞めて開業した年や、売上が急に増えた翌年は、請求額に驚きやすい項目です。逆に、売上が減った年でも、前年分の請求が来る点に注意してください。
所得税:確定申告と予定納税
所得税は、売上から経費と各種の控除を引いた課税所得に、税率をかけて計算します。国税庁のタックスアンサー(No.2260)によると、税率は課税所得に応じて5%から45%の7段階です。たとえば課税所得が195万円以上330万円未満なら税率10%、控除額97,500円、330万円以上695万円未満なら税率20%、控除額427,500円です。税額は「課税所得×税率−控除額」で求めます。
これとは別に、復興特別所得税が基準所得税額の原則2.1%かかります。令和9年1月1日以後に生じる所得からは、復興特別所得税の税率が1.1%に下がり、あわせて防衛特別所得税が設けられると同ページにあります。詳しい取扱いは国税庁の最新の案内を確認してください。
基礎控除は令和8年分から変わる
国税庁のNo.1199によると、基礎控除は合計所得金額に応じて決まり、令和8年分・令和9年分は、合計所得132万円以下で104万円です。表では132万円超489万円以下の欄も104万円を指す形で載っており、合計所得489万円超655万円以下は67万円、655万円超2,350万円以下は62万円です。令和7年分は95万円〜58万円と別の金額なので、前年の申告書の数字をそのまま使わないよう注意が必要です。
確定申告の期限と納付方法
No.2020では、申告・納付の期限は原則として翌年3月15日(申告期間は2月16日から3月15日)です。納付方法には、振替納税、ダイレクト納付、インターネットバンキング等、クレジットカード、スマホアプリ、コンビニ納付(QRコード)、現金納付(納付書)が挙げられています。申告書を出したあとに、税務署から納付書が送られてくることはありません。期限が土日祝にあたる年は、期日が変わることがあるので、毎年確認してください。
予定納税:7月と11月
No.2040によると、予定納税の対象は、その年の5月15日時点で確定している前年分の所得税額などから計算した予定納税基準額が15万円以上の人です。通知は6月15日までに届きます。納付額は基準額の3分の1ずつで、第1期が7月1日〜7月31日、第2期が11月1日〜11月30日です。確定申告のときに、納付済みの額を差し引いて精算します。所得が減りそうな場合は、減額申請ができます。
初めて独立した年や、前年の所得税が少なかった人は、予定納税の対象にならないことが多いです。ただし、その場合でも、確定申告で納める所得税が一度に来る点は変わりません。同ページには、令和8年度税制改正の基礎控除の見直しは予定納税額の計算には反映されず、翌年の確定申告で精算されるとあります。
住民税と個人事業税:翌年に来る2つの請求
住民税
東京都主税局のページによると、住民税は所得割と均等割からなります。所得割は前年の所得金額に応じて課税され、均等割は定額で、個人都民税1,000円と区市町村民税3,000円です。令和6年度からは、森林環境税として年額1,000円が均等割とあわせて課税されます。
給与所得者は6月から翌年5月まで給与から天引き(特別徴収)されます。フリーランスなど、それ以外の人は、区市町村から届く納税通知書で納めます(普通徴収)。このページには「年4回に分けて納めます」とありますが、具体的な月は載っていません。6月・8月・10月・翌年1月とする自治体が多いものの、通知書の納期が正です。所得割の税率は標準で10%として概算するのが一般的ですが(このサイトのツールも同じ前提です)、お住まいの自治体の案内で確認してください。
個人事業税
東京都主税局のページによると、個人事業税は法定の70業種の事業に課税されます。税率は業種によって3%・4%・5%で、デザイン業やコンサルタント業は5%です。ライター業については、このページでは確認できませんでした。対象かどうかは、都道府県の税事務所に確認してください。
- 事業主控除:年290万円(事業期間が1年未満の場合は月割)。
- 課税標準:事業所得などに青色申告特別控除額を加え、各種控除を引いたもの。個人事業税には青色申告特別控除が適用されないため、所得に加算されます。
- 納期:8月に納税通知書が届き、第1期の納期限は8月31日、第2期は11月30日です(休日の場合は翌日)。
概算の例です。事業所得が385万円(青色申告特別控除65万円を引いた後)で、税率5%の業種なら、385万円+65万円−290万円=160万円に5%をかけて、約8万円になります。損失の繰越控除などがあれば、これより小さくなります。事業所得が290万円以下の人は、通常は課税されないと考えて問題ありませんが、対象業種かどうかも含めて通知書で確認してください。
国民健康保険と国民年金:毎月かかる固定費
国民年金は定額
日本年金機構のページによると、令和8年度の国民年金保険料は月額17,920円です。年額にすると215,040円になります。納付期限は納付対象月の翌月末日で、末日が土日祝日や年末年始にあたる場合は、翌月最初の金融機関等の営業日です。まとめて前払い(前納)すると割引があります。月額400円の付加保険料を納めると、将来の老齢基礎年金を増やせます。
国民健康保険は所得と自治体で変わる
国民健康保険料は、市区町村が決めるため、住む場所で金額が大きく変わります。たとえば新宿区の令和8年度のページでは、医療分・支援金分・介護分(40〜64歳)・子ども・子育て支援金分を合算し、それぞれ「均等割」と「所得割」を足して計算するとされています。所得割の基になる算定基礎額は、前年の総所得金額等から基礎控除43万円を引いた額です。各区分には賦課限度額(上限)があります。
ここで注意したいのは、国保は前年の所得で決まることです。売上が増えた翌年は、国保料も上がります。この記事では具体的な料率は載せません(自治体ごとに異なり、年度で変わるため)。お住まいの自治体のホームページにある試算表か、前年の確定申告書の控えを使って、実額を確認してください。納期も自治体の通知書で確認します。
なお、保険料は経費にはならず、確定申告の社会保険料控除で扱います。控除の対象になる分は、所得税や住民税を計算するときに差し引かれます。
消費税:課税事業者になる人だけ
消費税の納税義務があるのは、課税事業者の人です。基準期間(個人事業者は2年前)の課税売上高が1,000万円以下で、インボイス発行事業者の登録をしていなければ、通常は納める必要はありません。登録するかどうかはインボイス登録の判断基準の記事で解説しています。
国税庁のNo.6601によると、個人事業者の消費税の申告・納付期限は、翌年の3月31日です。所得税の3月15日とは期限が違うので、注意してください。中間申告の基準は、このページでは確認できませんでした。前年の納税額が一定額を超える場合は中間申告が必要になることがあるため、国税庁の案内で確認してください。
2割特例・3割特例
国税庁の2割特例のページによると、インボイス発行事業者になった免税事業者は、納付税額を売上に係る消費税額の2割にできる特例があります。個人事業者は令和8年分の確定申告まで適用でき、令和9年・令和10年分は3割特例を適用できるとされています。売上(税抜)に10%をかけた消費税額の2割なら、売上の約2%、3割なら約3%が目安です。たとえば税抜売上480万円なら、2割特例で9万6,000円、3割特例で14万4,000円です。適用には要件があり、簡易課税の方が有利な場合や還付が生じる場合もあります。試算はインボイス登録シミュレーターと消費税の税込・税抜計算ツールが使えます。
登録していても、売上の消費税を預かっているだけで、自分のお金ではありません。消費税分は、入金のたびに別口座へ分けておくと安全です。
毎月いくら取っておく?計算の手順と目安
手順
- 年間の売上を見込む。去年の実績か、今年の見通しを使います。
- 経費と控除を引いて所得を出す。青色申告特別控除(65万円控除は要件あり)も引きます。
- 所得税・住民税を概算する。基礎控除(令和8年分は合計所得が低ければ104万円)や社会保険料控除を引いてから計算します。
- 国保・国民年金を足す。国民年金は月17,920円、国保は自治体の試算で。
- 課税事業者は消費税を足す。2割・3割特例か、簡易課税、本則かで決まります。
- 合計を12か月で割る。国保と国民年金は毎月払う固定費、税金は別口座に積み立てる、と分けて管理すると分かりやすくなります。
手計算は大変なので、納税資金の積立目安ツールや税金・手取り概算ツールに入れて確認してください。
具体例:専業のフリーランス
当サイトの積立目安ツールの試算例では、売上600万円・経費150万円・青色申告特別控除65万円の専業(国保は概算)の場合、所得税は約12万円、住民税は約29万円、国保は概算で約40万円、国民年金は約22万円です。合計は年103万円前後、月8万円台になります(個人事業税と消費税は含みません)。売上に対する割合では、約17%です。経費が少ない人は所得が大きくなるため、売上に対する割合は高くなります。自治体の国保が高いと、さらに上がります。上の約17%はあくまで一つの試算で、「売上の○割」という決まった数字があるわけではありません。
簡単な置き方
- 入金のたびに、売上の20%を別口座に移す(所得が大きい人や、消費税の課税事業者は25〜30%に)。
- 年に1回、確定申告のあとで、実際の納税額と積み立てた額を比べて、割合を見直す。
- 国保・国民年金を、毎月の生活費の固定費として別に確保しておく。
この割合は、公的な基準ではなく、続けやすさを優先した目安です。余った分は翌年の納税や、次の年の積立に回せます。入出金の管理には入金予定・資金繰りカレンダーが使えます。
会社員の副業の場合:何が違う?
会社員が副業で収入を得る場合、会社の給与からは所得税・住民税・社会保険料が天引きされ続けます。副業の分は、自分で申告して納める必要があります。
- 社会保険:会社の健康保険と厚生年金に入っていれば、副業のために国民健康保険や国民年金を別に払うことは通常ありません。
- 所得税:給与と副業の所得を合算して税率が決まります。給与が多い人は、副業の所得に10%〜20%の税率がかかることが多いです。
- 住民税:副業の所得にも課税されます。標準では10%(所得割)です。
- 個人事業税:対象業種で、事業所得が290万円を超える場合に課税の可能性があります。
- 消費税:登録しなければ、納める必要はありません。
「20万円以下は申告不要」の意味
国税庁のNo.1900によると、給与が1か所で全額源泉徴収されている人は、給与・退職所得以外の所得の合計が20万円を超える場合に、確定申告が必要です。この20万円は「売上」ではなく「所得」の基準です。また、このページは所得税だけを扱っており、住民税の申告については触れていません。所得税の申告が不要でも、住民税の申告が必要かどうかは、お住まいの市区町村に確認してください。
住民税の通知で会社に知られたくないとき
国税庁の確定申告書等作成コーナーの案内によると、給与・公的年金以外の所得にかかる住民税は、申告書の「住民税・事業税に関する事項」で、「特別徴収(給与から差し引き)」か「自分で納付」かを選べます。自分で納付を選べば、副業分の住民税の通知が会社を通らない形にできますが、自治体の運用によっては希望どおりにならない場合もあるため、市区町村に確認してください。具体例として、副業の所得が50万円なら、所得税は税率10%で約5万円(復興特別所得税を加えると約5.1万円)、住民税は約5万円で、合計は約10万円(所得の約2割)です。給与が多くて所得税の税率が20%の人なら、約15万円(約3割)になります。副業の所得は売上から経費を引いた額なので、売上の何割かではなく、所得の2〜3割を目安に取り分けると安全です。
まとめと、まず何をするか
- 税金と保険料は、売上ではなく所得から逆算する。簡易的には入金のたびに売上の2割前後(消費税の課税事業者や所得が大きい人はもっと多め)を別口座へ。
- 所得税は翌年3月15日まで(原則)、消費税は翌年3月31日まで。予定納税は7月と11月で、前年の予定納税基準額が15万円以上の人が対象。
- 住民税と個人事業税は前年の所得が基になり、翌年に請求される。国保も前年の所得で決まる。
- 国民年金は令和8年度で月17,920円。国保は自治体ごとに異なるので、実額を確認する。
- 副業の会社員は、社会保険は会社のものを使い、所得税・住民税が増える。所得の2〜3割を取り分ける。
今日からできることは3つです。
- 税金用の口座を1つ決め、次の入金から割合を決めて移す。
- 去年の確定申告書の控えや、住民税・国保の通知書を出して、実際にいくら払ったかを確認する。
- 予定納税の対象かどうか、6月に届いた通知を探す。11月分が残っているか確認する。
この記事の限界・注意点
- この記事は、2026年10月8日時点で確認できた国税庁などの公表情報による一般的な説明です。計算例は概算で、扶養控除、住宅ローン控除、損益通算、各種税額控除は含みません。
- 国民健康保険料の料率・納期、住民税の具体的な納期、個人事業税の対象業種、消費税の中間申告の基準は、この記事では確認できていません。お住まいの自治体や都道府県、国税庁の案内で確認してください。
- 期限が土日祝日にあたる年は、期日が変わることがあります。毎年の公式発表を確認してください。
- 開業初年度は、住民税・個人事業税・国保が翌年以降に来る点に注意してください。