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確定申告・節税

フリーランスの経費にできるもの・できないもの|家事按分・PC購入・手数料・領収書の考え方

結論から言うと、経費になるかどうかを決めるのは、金額や職種ではなく「事業の収入を得るために必要な支出か」と「それを説明できるか」です。仕事と私用が混ざる支出は、事業に使った分だけを区分して経費にします。「これは必ず経費になる」「これは絶対に落とせない」と言い切れる支出は、実は多くありません。

この記事では、経費の基本的な考え方、家賃・通信費・電気代の家事按分、パソコンや機材を買ったときの10万円・20万円・40万円の基準、交際費・会議費・勉強代の線引き、ココナラなどの手数料の扱い、領収書や帳簿の保存まで、国税庁の公表情報(2026年10月8日確認)にそって整理します。個別の判断は、税務署や税理士に確認してください。

公開:2026-10-08|最終確認:2026-10-08|約6500字

経費になる支出・ならない支出の基本ルール

国税庁のタックスアンサー(No.2210)によると、事業所得・不動産所得・雑所得の計算では、次の費用を必要経費に算入できます。

  • 収入に対応する売上原価など、収入を得るために直接かかった費用
  • その年に生じた販売費、一般管理費など、業務上の費用

ここで大事なのは「事業との関係」です。同じ本でも、仕事の資料なら経費の対象になり、趣味の小説なら対象外です。値段が高いか安いか、フリーランスらしいかどうかでは決まりません。

経費になる年は「債務が確定した年」

必要経費になるのは、その年に債務が確定した金額です。同じ国税庁のページでは、債務の確定を次の3つをすべて満たす場合としています。

  • その年の12月31日までに、債務が成立していること
  • その年の12月31日までに、その債務に基づく給付の原因となる事実が発生していること
  • その年の12月31日までに、金額を合理的に算定できること

支払った日だけで決まるわけではありません。たとえば12月に納品を受けて翌年1月に支払う外注費は、その年の経費になる場合があります。減価償却費のように、債務の確定によらないものもあります。

経費にならないもの、扱いが違うもの

国税庁のページには、次のような記載があります。

  • 所得税、住民税、罰金・科料・過料は、必要経費になりません。
  • 事業税は全額が必要経費になります。固定資産税は、業務用の部分だけが対象です。
  • 生計を一にする親族への家賃や給与は、原則として必要経費になりません(青色事業専従者給与などを除く)。
  • 業務用の資産を買うための借入金の利息は、必要経費になります。

また、国民年金や国民健康保険の保険料、医療費、寄附金は、経費ではなく確定申告の所得控除で扱います。経費にしてしまうと二重に引くことになるので、帳簿には入れないよう注意してください。個別の支出をその場で調べたいときは、経費にできる?判定ツールが使えます。

区分例扱い
経費にできる仕事専用の書籍、外注費、仕事用ソフトの利用料勘定科目に入れて帳簿に記録
按分して経費自宅の家賃、電気代、スマホ・ネット回線仕事に使った割合の分だけ
経費にならない所得税、住民税、罰金帳簿に入れない
経費ではなく控除国民年金、国保料、医療費、寄附金確定申告の所得控除で申告

家事按分:家賃・通信費・電気代をどう分けるか

自宅で仕事をする人は、家賃や光熱費のように、仕事とプライベートが混ざる支出を抱えます。このような費用を家事関連費といいます。国税庁のページでは、家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要だったことが明らかに区分できる金額だけとされています。

この「区分」の作業が家事按分です。なお、国税庁のこのページには「何%までなら認められる」という具体的な割合は載っていません。法律で決まった割合がない以上、実態に合った合理的な基準で計算し、根拠を残すことが基本です。

費目ごとの按分の考え方(慣行の例)

費目よく使われる基準根拠として残すもの
家賃・管理費仕事部屋の面積÷住居全体の面積間取り図、面積のメモ
電気・ガス・水道面積比、または仕事に使う時間の比在宅勤務日数や作業時間のメモ
ネット回線・スマホ仕事での利用時間や通信量の比利用状況のメモ、明細
車の費用業務の走行距離÷総走行距離走行記録

上の基準は慣行であり、法定ではありません。たとえば家賃が月7万5,000円(年90万円)で、住居50㎡のうち仕事部屋が10㎡なら、面積比は20%です。年90万円×20%=18万円が経費の候補になります。計算は家事按分の計算ツールで確認できます。

按分でよくある失敗

  • 割合を高くしすぎる:生活の実態から見て不自然に高い割合は、説明が難しくなります。
  • 根拠を残さない:割合を決めた理由がメモに残っていないと、あとで説明できません。
  • 持ち家なのに家賃を計上する:持ち家の場合は家賃ではなく、固定資産税(業務用の部分)や住宅ローンの利息のうち建物部分、建物の減価償却費などが対象になります。ローンの元金は経費になりません。
  • 家族への家賃:生計を一にする親族に家賃を払っても、原則として必要経費になりません。

青色申告か白色申告かで、家事関連費の判定基準の細部が異なると説明されることがあります。どちらで申告するかによって扱いが変わる可能性があるので、所得税基本通達などの公式の案内で確認してください。自宅の一部を事業用にすると、住宅ローン控除や、あとで自宅を売るときの特例に影響が出る場合もあります。

PC・機材を買ったとき:10万円・20万円・40万円の基準

仕事用のパソコンやカメラなど、長く使う物を買ったときは、取得価額によって経費の落とし方が変わります。国税庁のタックスアンサー(No.2100、令和8年4月1日現在)の内容は次のとおりです。

取得価額扱い
10万円未満(または使用可能期間が1年未満)取得した年に全額を必要経費にできる
10万円以上20万円未満一定の要件のもと、3年で3分の1ずつ必要経費にする方法(一括償却)が選べる
10万円以上40万円未満(青色申告者の特例)合計300万円に達するまで、使い始めた年に全額を必要経費にできる
上記以外耐用年数にわたって減価償却

青色申告者の特例は「40万円未満」

国税庁のNo.2100によると、青色申告者の少額減価償却資産の特例は、平成18年4月1日から令和11年3月31日までに取得した資産が対象で、取得価額は10万円以上40万円未満です。ただし、令和8年3月31日までに取得した分は30万円未満とされています。つまり、令和8年4月1日以後に買った資産から40万円未満に広がっています。合計300万円までという年間の上限もあります。

白色申告の人はこの特例の対象外です。また、令和4年4月1日以降に取得した貸付用の資産(主要な業務として貸し付けるものを除く)には、この特例は適用されません。

税込経理か税抜経理かで金額が変わる

10万円や40万円の判定に消費税を含めるかどうかは、経理方式によります。税込経理なら税込の金額、税抜経理なら税抜の金額で判定します。免税事業者は税込経理です。たとえば税込11万円のパソコンは、税込経理なら10万円以上、税抜経理なら税抜10万円で「10万円未満」の扱いになる場合があります。経理方式を決めてから判定してください。

具体例:25万円のパソコン

2026年10月から使い始めた税込25万円のパソコンで、耐用年数が4年、定額法の償却率が0.250だとします。通常の減価償却では、初年度は3か月分なので250,000円×0.250×3/12=15,625円です。青色申告で特例の対象になるなら、25万円を使い始めた年に全額経費にする選択もあります。

ただし、全額を一度に経費にすると、翌年以降の経費はなくなります。利益が大きい年に使うか、毎年少しずつ落とすかは、その年の所得の見込みで判断する人が多いです。耐用年数は資産の種類や用途で決まるため、表示の年数が自分の資産に当てはまるかは公式で確認してください。計算は減価償却の計算ツールで試せます。

償却方法については、新たに業務を始めた場合は翌年3月15日までに税務署長へ届け出て選定します。届出をしない場合は定額法になります。方法を変えたいときは、変更する年の3月15日までに申請して承認を受ける必要があります。

仕事と私用の両方で使うPCやスマホ

仕事と私用で使うPCやスマホは、購入代金も按分の対象になります。たとえば仕事での使用割合が7割なら、取得価額の7割が減価償却や特例の判定の対象になります。判定の対象となる金額が按分後か按分前かは、細部の取扱いを国税庁の案内で確認してください。

交際費・会議費・勉強代の線引き

金額が小さくても、判断に迷いやすいのがこの3つです。ここでは国税庁の公表情報にある一般原則を前提に、実務でよく使われる考え方を整理します。個別の支出ごとに、事業との関係を説明できるかが基準です。

交際費・会議費:「誰と、何の目的で」を残す

取引先との打ち合わせでの飲食費や、手土産、お中元・お歳暮などは、事業の収入を得るために必要だったと説明できれば、経費にできる場合があります。一方で、友人との食事や家族での外食は、私用なので対象外です。

  • 打ち合わせ中のコーヒー代は、会議費や打ち合わせ費としている人が多い。
  • 取引先との会食や贈答は、交際費として処理している人が多い。
  • どちらも、日付・相手先・目的・金額をメモに残しておくと、あとで説明しやすい。

法人の交際費には損金算入の制度上の基準額などがありますが、個人事業主にそのまま当てはまるとは限りません。「1人あたり何円までなら大丈夫」という数字だけを信じず、事業との関係を記録する習慣をつけてください。

勉強代:今の仕事に直接つながるか

書籍、セミナー、オンライン講座の費用は、現在の事業の収入を得るために必要な知識の習得なら、経費にできる場合が多いです。たとえば、Webデザイナーがデザインの本や制作ツールの使い方講座を買うケースです。

  • 今の仕事に関連する書籍・講座:経費にしやすい。
  • 将来の転職や、まったく別の分野への挑戦のための費用:事業との関係を説明しにくい。
  • 仕事に関係するかが曖昧な学習:購入の目的や活用のメモを残しておく。

資格の取得費用も、その資格が現在の事業に必要かどうかで判断します。迷う場合は、税務署や税理士に確認してください。

衣服・美容・サブスクの考え方

スーツや美容院の費用は、私用との区別がつきにくく、経費として認められにくい支出の代表例です。仕事専用の撮影用衣装や備品のように、私用と明確に分けられるものであれば、別に検討できます。動画配信やソフトのサブスクは、仕事で使う分は経費、私用と兼ねるなら按分します。

プラットフォーム手数料・報酬から引かれるもの

ココナラ、クラウドソーシング、note、アフィリエイトなどで売上を得ている人は、手数料の処理に注意が必要です。基本の考え方は次のとおりです。

  • 売上は、手数料を引く前の総額で計上する。
  • 引かれた手数料は、支払手数料などの経費として別に計上する。
  • 入金額だけを売上にしてしまうと、売上と経費の両方が小さく見えてしまうので、避ける。

たとえば5,000円の依頼で手数料が22%(税込)なら、売上は5,000円、支払手数料は1,100円です。入金は3,900円になります。出金時の振込手数料も、支払手数料などとして経費にできる場合があります。手数料の仕組みは、ココナラの手数料と値付けの記事、クラウドソーシングの手数料の記事、コンテンツ販売の手数料の記事で詳しく解説しています。

源泉徴収された報酬の扱い

報酬から源泉所得税が引かれて振り込まれた場合も、売上は引かれる前の総額で計上します。引かれた源泉所得税は、確定申告で納める所得税から差し引いて精算します(経費にはしません)。くわしくは源泉徴収とインボイスの記事を参照してください。

領収書と帳簿:何を、いつまで、どう残すか

経費を落とすには、支出を帳簿に記録し、証拠となる書類を保存する必要があります。国税庁のタックスアンサー(No.2080、令和8年4月1日現在)には、白色申告者向けの保存期間として次のように載っています。

保存が必要なもの保存期間
収入金額・必要経費を記載した帳簿(法定帳簿)7年
それ以外の業務関係帳簿(任意帳簿)5年
棚卸表などの決算関係書類5年
請求書、納品書、領収書などの書類5年

青色申告者の保存期間や書類の範囲は、この白色申告向けのページでは確認できていません。青色申告の方は、国税庁の青色申告の案内で確認してください。保存場所は、住所地や事業所の所在地に整理して保存します。

帳簿が不十分だと不利になる

同じページによると、令和5年分以降は、売上に関する帳簿を保存していない、または記載が不十分な場合、税務調査で把握された申告漏れに対して、過少申告加算税・無申告加算税の割合が5%または10%加重されます。帳簿の記録は、節税の道具であるだけでなく、不利益を避けるための備えでもあります。

領収書がないときの対処

  • キャッシュレス決済の利用明細や、銀行口座の引落記録は、支払の証拠として保管する。
  • 領収書が出ない支出(電車代など)は、日付・行き先・目的・金額を自分で記録する。
  • ネットで受け取った領収書や請求書は、データで保存する。電子取引データの保存には電子帳簿保存法の要件があるため、国税庁の電子帳簿保存法のページで確認してください(今回の記事では要件の詳細は確認できていません)。

領収書の宛名や但し書きは、あとで事業との関係を説明するときの手がかりになります。宛名が空欄や「上様」のままでも、日付・金額・支払先が分かれば、他の記録と合わせて説明できる場合がありますが、可能なら屋号や氏名を入れてもらうと安心です。領収書の発行側は領収書メーカーでも作れます。

経費の判断で迷ったときの手順

  1. 事業の収入に関係があるかを考える。まったく関係がなければ、経費にしない。
  2. 私用と混ざっているかを確認する。混ざっていれば、按分する。
  3. 按分の基準と根拠をメモする(面積、時間、回数など)。
  4. 金額で扱いが変わるかを確認する(10万円・20万円・40万円)。
  5. 証拠を保存する(領収書、明細、メモ)。
  6. それでも判断できなければ、税務署や税理士に確認する。

経費を増やしすぎれば所得が小さくなり、税金は減りますが、その分だけ国民健康保険料や住民税も小さくなる一方、将来の信用(融資やローン審査)で不利になる場合もあります。経費は「節税のために増やすもの」ではなく、「実際に事業にかかった費用を正しく記録するもの」と考えるのが基本です。節税の全体像は節税の見落としチェック、申告前の確認は確定申告の準備チェックが役立ちます。

まとめと、まず何をするか

この記事の要点を整理します。

  • 経費の基準は「事業の収入を得るために必要か」と「説明できるか」。金額や職種では決まらない。
  • 所得税・住民税・罰金は経費にならない。国民年金や国保料、医療費、寄附金は経費ではなく所得控除。
  • 家賃・光熱費・通信費は、事業に使った分だけを按分。割合に法律上の決まりはなく、根拠のメモが大切。
  • PC・機材は、10万円未満なら全額、10万円以上20万円未満なら一括償却を選べる。青色申告者は、令和8年4月1日以後の取得分から10万円以上40万円未満の特例がある(合計300万円まで)。
  • 交際費・会議費・勉強代は、日付・相手・目的を記録しておく。
  • プラットフォーム手数料は、売上を総額で計上し、手数料を支払手数料として別に計上する。
  • 帳簿・書類は、白色申告者のページでは7年・5年の保存期間が示されている。

今日からできることは3つです。

  1. 仕事に使っている家賃・通信費・光熱費を書き出し、按分の基準と割合をメモする。
  2. 今年買った10万円以上の物を、一覧にして金額と購入日を記録する。
  3. 領収書や明細の保存場所を決める(紙の箱でも、クラウドでもよい)。

この記事の限界・注意点

  • この記事は、2026年10月8日時点で確認できた国税庁の公表情報にもとづく一般的な説明です。個別の事情で結論は変わります。
  • 家事関連費の青色・白色の細かな取扱いの違い、青色申告者の保存期間、電子取引データの保存要件、交際費・会議費の個別の線引きは、この記事では確認できていません。国税庁の最新の案内や、税務署・税理士に確認してください。
  • 少額減価償却資産の特例の数値(40万円、300万円、令和11年3月31日まで)は国税庁No.2100の記載です。改正や適用要件の詳細は、取得前に最新の公式案内で確認してください。
  • 消費税の課税事業者は、税込経理か税抜経理かで経費の金額が変わります。インボイス制度への対応も別に必要です。

次に読む記事:税金と社会保険のために毎月いくら取っておくか。

本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、個別の税務・法律相談ではありません。制度は改正されることがあるため、実際の判断は国税庁などの公式情報や、税理士などの専門家にご確認ください。