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フリーランスの老後資金:国民年金だけで足りない金額と、現実的な埋め方

結論から言うと、国民年金だけで老後の生活費を賄うのは難しく、不足額は「老後の生活費×年数」の大部分になります。ただし、不足の大きさは、生活費・受け取り始める年齢・働く期間で大きく変わります。この記事では、令和8年度の国民年金額で不足額を計算し、埋める手段を効果の大きい順に整理します。

公開:2026-10-14|最終確認:2026-10-14|約5300字

国民年金でいくら受け取れるのか

令和8年度の老齢基礎年金は、20歳から60歳までの40年間(480か月)すべての保険料を納めた場合の満額で、月70,608円(昭和31年4月2日以後生まれの人)です。年額に直すと847,296円です。納付した月数が少ないと、その割合で減ります。たとえば360か月(30年)しか納めていなければ、満額の4分の3で、月約52,956円です。

自営業・フリーランスは、会社員が加入する厚生年金に入っていないのが一般的です。このため、年金の収入は国民年金だけになることが多く、月7万円前後が基本になります。ここから、国民健康保険料や介護保険料、場合によっては所得税・住民税が引かれるため、手取りはさらに少なくなります。当サイトの老後の不足額ツールでは、手取りを年金額の約9割(引かれる割合10%)と置いて計算します。

不足額を計算する:数字の例

35歳、65歳まで働き、65歳から満額の国民年金を受け取り、95歳まで生きる前提で計算します。老後の生活費は月25万円、年金から10%が引かれるとします。

項目金額
年金の月額(満額)70,608円
手取り(10%控除後)約63,500円
毎月の不足(25万円−約6.35万円)約186,500円
30年分(65〜95歳)の不足約6,700万円
これを65歳までの30年で積み立てる額(利回り0%)月約18.6万円
同じく利回り3%で運用できた場合月約11.5万円

大きな数字で、驚いた人も多いと思います。ここで大事なのは、これが「何も手を打たなかった場合の不足」だということです。次の節で、不足を小さくする手段を、効果の大きい順に見ていきます。

効果が大きい順:不足を小さくする手段

1. 老後の生活費を下げる

もっとも効果が大きく、確実なのは生活費です。生活費が月25万円から20万円に下がると、毎月の不足は約186,500円から約136,500円になり、30年分の不足は約6,700万円から約4,900万円に減ります。5万円の差が、約1,800万円の差になります。特に家賃は、持ち家か賃貸かで大きく変わります。老後の住まいをどうするかは、年金の計画と同じくらい重要です。

2. 働く期間を延ばす・収入を少し残す

65歳で完全に引退する前提を外し、月数万円でも収入を得ると、取り崩す額が減ります。たとえば月5万円の収入が70歳まで続けば、5万円×12か月×5年で300万円です。自営業の国民年金(基礎年金)は、働いて収入があっても減額されません。なお、会社員として厚生年金に加入して働く場合は、在職老齢年金という調整の仕組みがあります。

3. 付加年金を上乗せする

国民年金の保険料に月400円を上乗せして納めると、将来の年金に「200円×付加保険料を納めた月数」が年額で加算されます。36年(432か月)納めると、年86,400円(月7,200円)の増額です。納付総額は172,800円で、受け取りが2年を超えれば元が取れる設計です。ただし、国民年金基金に加入している人は、付加保険料を納められません。

4. 受け取り始める年齢を遅らせる

年金は、65歳より遅く受け取り始める「繰下げ」で、1か月遅らせるごとに0.7%増えます。70歳まで繰り下げると42%増(月70,608円が約100,263円)、75歳なら84%増です。逆に60歳から受け取る「繰上げ」は、1か月早めるごとに0.4%減り、60歳なら24%減です。繰下げの効果は大きい反面、受け取り始めるまでの生活費が別に必要です。先の例で、70歳まで働けて70歳から受け取る場合、空白の5年間の生活費(月25万円×60か月=1,500万円)を足しても、必要な額の合計は約6,293万円で、65歳受給の約6,712万円より少なくなります。

5. 国民年金基金・iDeCo・小規模企業共済

国民年金に上乗せする私的年金や、退職金の積立です。掛金が所得控除になるため、税の負担も下がります。ただし、あくまで自分で積み立てる手段で、掛金を払えばその分の貯蓄になるだけです。詳細は小規模企業共済・倒産防止共済・iDeCoの違いの記事で説明しています。

6. 厚生年金に入る期間を作る

会社員として働いた期間は、厚生年金の加入期間になります。パートやアルバイトで、一定の条件を満たせば、厚生年金に加入できる場合もあります。法人化して、自分が役員報酬を受け取る形にすると、厚生年金に加入できます(その分、保険料の負担は増えます)。詳細は法人化はいくらから?で説明しています。厚生年金の見込み額が分かれば、老後の不足額ツールの「厚生年金などの見込み額」に入れて計算できます。たとえば月10万円の上乗せがある場合、同じ例で不足は約3,470万円まで減ります。

モデルケースで比べる

35歳の人が、手を打つ数に応じて、必要な積立がどう変わるかを3つのケースで比べます(95歳まで、年金から10%が引かれる前提。当サイトのツールによる計算)。

ケース前提老後に必要な額毎月の積立額
A 何もしない生活費25万円、65歳まで働いて65歳から受給、付加年金なし約6,712万円月約18.6万円(利回り0%)
B 生活費を下げて付加年金生活費20万円、付加保険料を36年納付、65歳から受給約4,679万円月約13.0万円(0%)/月約8.0万円(3%)
C B+70歳まで働いて70歳から受給生活費20万円、付加36年、70歳まで働き、70歳から受給(繰下げ42%増)約3,017万円月約7.2万円(0%)/月約4.1万円(3%)

ケースAとCの差は、必要な額で約3,700万円、毎月の積立額で約11万円です。1つひとつの工夫の効果は大きくなくても、組み合わせると、不足が半分以下になるのが分かります。反対に、手を打たないまま時間が過ぎると、積立期間が短くなり、毎月の負担は重くなります。

国民年金基金という選択肢

国民年金基金は、自営業者が国民年金に上乗せして加入できる公的な年金制度です。掛金は全額が所得控除になり、終身年金など、一生受け取れる給付が選べるのが特徴です。掛金の上限は月68,000円で、iDeCoの掛金と合算で管理されます。加入すると、付加保険料は納められません。また、原則として途中で脱退できないため、長期で払い続けられる掛金を選びます。給付は、加入時に決めた内容で固定され、将来の物価の上昇には連動しないことも理解しておきます。加入の可否や商品の内容は、国民年金基金の窓口で確認してください。

老後の生活費をどう見積もるか

不足額を左右するのは、老後の生活費の見積もりです。「いまの生活費の7〜8割くらい」と考えがちですが、住まいの形によって大きく変わります。次の観点で、自分の家計を分けて見積もります。

  • 住居費:持ち家なら、固定資産税、修繕費、管理費が中心です。賃貸なら家賃が、年金生活でも続きます。高齢になると、賃貸契約が難しくなる場合があることも考えておきます。
  • 食費・光熱費・日用品:現役時代と大きくは変わりません。
  • 医療費・介護費:年齢とともに増えます。高額療養費制度などで上限はありますが、自己負担は続きます。
  • 税・社会保険料:年金収入でも、所得税・住民税・国民健康保険料・介護保険料がかかる場合があります。
  • 趣味・交際費・旅行:削りやすい項目ですが、生きがいにも関わるため、ゼロにはしないほうが続きます。

この見積もりを、現在の生活費の記録から作ると、数字に根拠が生まれます。やりたい暮らしの値段ツールで、項目ごとに入力しておくと、後で見直しやすくなります。

国民年金を満額にするために

不足を小さくする一番の土台は、国民年金を満額にすることです。保険料(令和8年度は月17,920円)を、納付期限までに納めます。払えないときに、未納のまま放置しないことが重要です。収入が少ない場合は、保険料の免除・納付猶予の制度があります。免除や猶予を受けた期間は、年金額には一部しか反映されませんが、障害年金などの受給資格の期間には含まれる扱いです。後から保険料を納める「追納」も、一定の期間内(10年以内)ならできます。免除の割合や追納の条件は、年金事務所で確認してください。

国民年金の納付状況は、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認できます。自分の納付月数を知らないまま計画を立てるのは危険です。まず、現状の確認から始めてください。

いくらから積み立てるか:始める年齢の影響

同じ不足額でも、始める年齢で毎月の積立額は大きく変わります。先の例(不足約6,700万円、利回り0%)で、65歳までの積立期間を変えて比べます。

始める年齢積立期間毎月の積立額
35歳30年約18.6万円
45歳20年約28.0万円
55歳10年約55.9万円

早く始めるほど、毎月の負担は小さくなります。ただ、この金額を貯金だけで賄うのは非現実的だと感じる人も多いでしょう。だからこそ、先に挙げた「生活費を下げる」「働く期間を延ばす」「付加年金・繰下げ・共済を組み合わせる」ことで、必要な積立額を下げます。たとえば、生活費20万円・付加年金あり・利回り3%の運用を組み合わせれば、毎月の積立額は月8万円前後まで縮められる場合があります(このあとのモデルケースを参照)。

運用を考えるときの注意

利回り3%などの前提は、保証されたものではありません。元本割れや、長期間にわたって低迷することもあります。老後資金を運用する際は、次の点を意識します。

  • 生活防衛資金とは分ける:病気や収入減に備える貯金は、運用に回さず、すぐに使える形で残します。
  • 期間を長く取る:短期の値動きで判断せず、長期で積み立てる方針を決めます。
  • 手数料を確認する:運用商品の手数料(信託報酬など)は、長期では結果に影響します。
  • 非課税制度を知る:iDeCoのほか、NISAなど、運用益が非課税になる制度があります。最新の内容は金融庁や金融機関の案内で確認してください。

年金額の改定と物価の影響

年金額は、物価や賃金の変動に応じて毎年度改定されます。物価が上がれば年金額も上がりますが、改定は物価の上昇より小さく抑えられる仕組み(マクロ経済スライド)があり、実質的な価値は目減りしやすいとされています。このため、当サイトのツールで計算した不足額は、現在の価格での目安です。将来の物価上昇を考えると、必要な額はもっと大きくなる可能性があります。定期的に(年1回程度)、数字を入れ直すのがおすすめです。

今日からできること

  1. 「ねんきんネット」で、国民年金の納付月数と、将来の見込み額を確認する。
  2. 当サイトの老後の不足額ツールに、自分の数字を入れて、不足額を知る。
  3. 老後の生活費の目標を、いまの家計から決める。やりたい暮らしの値段ツールで現在の暮らしの費用を整理できます。
  4. 付加保険料(月400円)を始めるかを決める。国民年金基金に入る予定がないなら、検討の価値があります。
  5. 共済・iDeCoの掛金を、余裕資金の範囲で決める。
  6. 年に1回、数字を見直す。

よくある質問

国民年金は、将来もらえなくなりませんか?

制度が廃止されるという前提は、現実的ではありません。ただし、給付水準は物価や人口の動きで調整されるため、将来の受け取り額が今の水準と同じとは限りません。だから、年金に頼り切らず、自分の貯蓄や働き方を組み合わせる考え方が必要です。

家族がいる場合は、どう考えますか?

配偶者も国民年金の第1号被保険者の場合は、それぞれが国民年金を受け取れます。生活費は世帯で計算するため、当サイトのツールでは世帯の生活費を入力し、年金の部分は夫婦それぞれの手取りを足して「年金以外の毎月の収入」の欄に入れると、おおよその計算ができます。

貯金がないまま40代・50代になりました。もう遅いですか?

遅くはありません。積立期間が短いほど毎月の額は大きくなりますが、年金の繰下げ、働く期間の延長、生活費の見直し、付加年金は、始める年齢が遅くても効果があります。まず現在の数字を知り、できる手段から1つずつ始めてください。

家計の見直しは「固定費」から

老後の生活費を下げる一番の近道は、固定費の見直しです。住居費(家賃・ローン)、保険料、通信費、車の維持費、サブスクは、一度見直すと、効果が長く続きます。変動費のようなこまめな節約より、気持ちの負担が小さく、続けやすい方法です。現役のうちに、老後の暮らし方を試す期間(生活費を老後の水準に近づけて暮らしてみる期間)を持つと、無理のない目標が見つかります。

この記事の限界・注意点

  • 年金額や制度は改正されます。令和8年度の数字は、日本年金機構の公表に基づきます。最新の内容は、年金事務所や日本年金機構で確認してください。
  • 年金から引かれる割合、医療費・介護費、住居費は人によって大きく異なります。入力の値は目安です。
  • 運用の利回りは保証されません。投資の判断は、自己責任でお願いします。
  • 個別の相談は、年金事務所、ファイナンシャルプランナーなどにしてください。

本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、個別の税務・法律相談ではありません。制度は改正されることがあるため、実際の判断は国税庁などの公式情報や、税理士などの専門家にご確認ください。