領収書・請求書・帳簿の保存期間と電子保存のルール|個人事業主向け
結論から言うと、個人事業主が押さえるべき点は3つです。①帳簿と書類には保存期間がある(青色申告の帳簿は7年、請求書など「その他の書類」は5年が基本)。②メールやクラウドで受け取った請求書・領収書のデータは、紙に印刷せず電子データのまま保存する。③紙の領収書をスキャンして保存するかどうかは任意。迷ったときは「7年を目安に、電子で受け取ったものは電子で残す」と決めておくと、大きく外しにくくなります。
この記事は、国税庁の公表情報(2026年10月13日確認)をもとにした一般的な情報で、税務上の個別判断ではありません。自分のケースは、税務署または税理士にご確認ください。
何を、何年保存する?個人事業主の帳簿書類の保存期間
所得税の申告をしている個人事業主には、帳簿と、取引に関する書類を一定期間保存する義務があります。国税庁の個人事業者向け案内(記帳と帳簿書類の保存)では、保存期間は次のように整理されています。
| 区分 | 主な書類 | 青色申告 | 白色申告 |
|---|---|---|---|
| 帳簿 | 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、経費帳、固定資産台帳など | 7年 | 収入や経費を記載した帳簿は7年、それ以外の帳簿は5年 |
| 決算関係書類 | 損益計算書、貸借対照表、棚卸表など | 7年 | 5年 |
| 現金預金取引等関係書類 | 領収書、小切手控、預金通帳、借用証など | 7年(前々年分の事業所得・不動産所得が300万円以下の場合は5年) | 5年 |
| その他の書類 | 請求書、見積書、契約書、納品書、送り状など | 5年 | 5年 |
表のうち、青色申告の「300万円以下なら5年」の注記がどの行にかかるのかは、案内の書き方だけでは読み取りにくい部分です。国税庁の一問一答では、現金預金取引等関係書類(領収証など)の説明として整理されています。判断に迷う場合は、国税庁の原文か税務署で確認してください。
白色申告についても、案内には補足があります。業務に係る雑所得がある方は、前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える場合、その業務の現金預金取引等関係書類を5年間保存する必要があるとされています。副業で雑所得として申告している方は、この点も確認しておくと安心です。
起算点(いつから数えるか)
国税庁の一問一答【電子取引関係】には、起算日として「帳簿は閉鎖日、書類は作成・受領日の属する年の翌年3月15日の翌日」と読める整理が載っています。たとえば2026年中に受け取った領収書なら、2027年3月16日から数え始めるイメージです。ただし、個別の書類で起算日がずれる場合もあるため、断定はせず、実際の整理は国税庁の原文で確認してください。
消費税の課税事業者は「7年」を基準に
国税庁の案内には、消費税の課税事業者について、仕入税額控除の要件として保存する請求書等や、インボイス発行事業者として交付した適格請求書の写し、提供した電磁的記録は、上記の区分にかかわらず7年間保存するとあります。インボイスの登録をしている方は、請求書の控えを5年で捨てずに、7年を目安にしておくのが安全です。
迷ったら「すべて7年」で運用するのが簡単です。5年と7年を書類ごとに分けて管理するより、手間とミスが減ります。保存場所の容量が問題なら、電子で持つ分には負担はほとんどありません。
電子帳簿保存法の3つの区分:自分に関係があるのはどれか
電子帳簿保存法という名前を聞くと身構えてしまいますが、国税庁の特設サイトでは、制度は大きく3つに分けて案内されています。
| 区分 | 内容 | 個人事業主にとっての位置づけ |
|---|---|---|
| 電子取引 | メール、クラウド、Webサイト経由でやり取りした請求書・領収書などのデータの保存 | 該当する取引があれば、保存が必要 |
| 電子帳簿・電子書類 | 会計ソフトなどで作成した帳簿や、パソコンで作成した書類を電子のまま保存する制度 | 使うかどうかは任意 |
| スキャナ保存 | 紙で受け取った書類をスキャンして、紙の代わりに保存する制度 | 使うかどうかは任意 |
このうち、実務で最も影響が大きいのは「電子取引」です。特設サイトでは、所得税法・法人税法上の保存義務者は、特に電子取引について確認するよう案内されています。個人事業主もこの対象です。
電子取引のデータ保存:メールやクラウドで受け取った請求書はどうする?
対象になるもの
国税庁の一問一答では、次のようなものが電子取引として整理されています。
- メールに添付して送られてきたPDFの請求書・領収書(添付ファイルを保存すれば足りる。取引情報を含まないメール自体は保存不要)。
- メール本文に取引情報が書かれている場合のそのメール。
- クラウドサービス上で受け取った請求書や領収書。ダウンロードして保存する場合は、後述の要件への注意が必要。
- Webサイトに表示される領収書を、スクリーンショットなどで保存する場合。データとして保存し、要件を満たす必要がある。
自分が発行して送った請求書も、電子で送ったものは対象です。クラウドの請求書作成サービスや、請求書作成ツールで作ったPDFをメールで送るなら、その控えのデータも保存しておきます。
紙に印刷して終わりにしない
一問一答には、令和4年1月1日以後の電子取引について、電子データを出力した書面で保存する措置は廃止されていること、書面は保存書類として扱われないことが書かれています。さらに、後述の「相当の理由」がある場合でも、電子データの保存に代えて出力書面だけで保存することは認められないとされています。つまり、メールで受け取ったPDFを印刷して、元のデータを消すのは避けるべきです。
消費税の仕入税額控除については、電子インボイスを整然と出力した書面を保存すれば控除を受けられるという別の整理が、同じ一問一答の注記にあります。ただ、これは消費税の話で、所得税・法人税の保存義務とは別です。税務全体で見れば、電子のまま保存しておくのが基本です。
保存の3つの要件
保存するときの要件は、真実性・可視性・検索の3つです。
- 真実性の確保:次のいずれかを行います。タイムスタンプの付与、訂正・削除の記録が残る(または訂正・削除ができない)システムでの授受と保存、「正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」を定めて運用すること。個人で使いやすいのは、事務処理規程を作る方法と、要件を満たすクラウドサービスを使う方法です。規程のひな形は国税庁のサイトにあります。
- 可視性の確保:ディスプレイやプリンタなどを備え付けて、データを整った形で速やかに出力できるようにします。普段使っているパソコンとプリンタがあれば足りる、というのが一般的な理解です。
- 検索機能の確保:取引年月日、取引金額、取引先で検索できる状態にします。ファイル名に規則性を持たせる方法や、索引簿を作る方法が示されています。
検索要件が不要になる条件
一問一答によると、基準期間の売上高が5,000万円以下の場合は、検索機能の確保が不要です。個人事業者の場合は、電子取引が行われた年の前々年(1月1日から12月31日)の売上高で判定します。また、電子データを出力した書面を、取引年月日や取引先ごとに整理して提示できる場合も、検索機能は不要とされています。いずれの場合も、税務調査のときにデータのダウンロードの求めに応じられることが条件です。令和5年度の改正前は、この基準額が1,000万円以下だったと注記されています。
多くのフリーランスはこの条件に当てはまる見込みですが、前々年の売上が5,000万円を超える年は、検索要件を満たす必要があります。
「相当の理由」がある場合の扱い
令和6年1月1日以後の電子取引について、税務署長が、要件どおりに保存できなかったことに相当の理由があると認め、税務調査などで電子データと整った出力書面を提示・提出できる場合は、保存時の要件にかかわらず電子データの保存が認められます。ただし、何が「相当の理由」にあたるかの具体的な判断基準は、確認できた範囲では示されていませんでした。これを前提に運用するのではなく、最初から要件を満たす形で保存しておくほうが確実です。
ファイル名で整理する:検索要件と実務を両立するコツ
一問一答では、検索機能を確保する方法として、ファイル名に日付・取引先・金額を規則的に付ける方法が例示されています。個人事業主なら、この方法が現実的です。
ファイル名の例(取引年月日_取引先_金額)
- 20261031_株式会社サンプル_110000.pdf
- 20261125_サンプル文具店_3980.pdf
日付を8桁にそろえると、並べ替えるだけで時系列に整理できます。受け取り側・発行側のどちらも同じルールにすると、探す手間が減ります。
フォルダの分け方の一例
- 年ごとにフォルダを分ける(例:2026)。
- その下を「売上(発行した請求書)」「経費(受け取った領収書・請求書)」「契約・見積」に分ける。
- 電子で受け取ったものと、紙をスキャンしたものを、同じ構造で並べる。分けるのは、後で見直しやすくするため。
日々の運用を軽くするポイント
- 受け取ったその日のうちに、ファイル名を付けて保存する。後でまとめて整理しようとすると、金額や取引先が分からなくなりやすい。
- クラウド会計ソフトや、請求書の管理サービスを使うなら、訂正・削除の履歴が残るかどうかを、提供元の案内で確認する。
- パソコン本体だけに置かず、バックアップも取る。一問一答には、バックアップの保存は法令上の要件ではないものの、望ましいとの趣旨の記載があります。
- 事務処理規程を作る場合は、国税庁のひな形を参考に、自分の運用に合わせて短くまとめる。
経費として計上してよいかどうかの判断は、保存とは別の話です。経費の考え方は経費の記事、迷う支出の確認は経費判定チェックが使えます。
紙の領収書・請求書:スキャン保存は任意
紙で受け取った領収書や請求書は、紙のまま保存しても問題ありません。国税庁の一問一答【スキャナ保存関係】では、スキャナ保存は「書面による保存に代えて、スキャン文書による保存が認められる制度」で、義務ではないと説明されています。スキャンして保存したいときだけ、要件を満たす形で行います。
スキャナ保存の主な要件
国税庁の資料で確認できた主な要件は、次のとおりです。
- 解像度:25.4mm当たり200ドット以上(200dpi相当以上)で読み取る。
- カラー:赤・緑・青それぞれ256階調以上。一般書類は、グレースケール(白黒階調)でも可。
- 入力期間:作成・受領後、おおむね7営業日以内に入力する。業務処理サイクル方式を採る場合は、最長で2か月とおおむね7営業日以内(処理規程が必要)。
- タイムスタンプ:総務大臣が認定する時刻認証業務のものを、入力期間内に付与する。訂正・削除の履歴が残るシステムなどで入力時刻を確認できる場合は、付与に代えられる。
- 検索機能:取引年月日、取引金額、取引先で検索できること。税務職員のダウンロード要求に応じられる場合は、範囲指定や項目の組み合わせ検索は不要。
国税庁の資料には、スキャナ保存の対応ソフトを使うのが一般的、という趣旨の案内もあります。自分で要件を満たそうとすると手間がかかるため、スキャナ保存を使う場合は、要件に対応したアプリやサービスを選ぶのが現実的です。
スキャンしたあと、紙は捨ててよい?
一問一答では、令和4年1月1日以後の保存分については、読み取りと最低限の同等確認(記載事項の一致、折れ曲がりがないことなど)をしたあとであれば、紙の原本を廃棄できるとされています。ただし、例外が示されています。
- 入力期間を過ぎてしまった場合や、プリンタの最大出力より大きい書類を読み取った場合は、紙の保存が必要。
- 印紙税の過誤納の還付を受けるには、原本の提示が必要で、スキャンデータでは受けられない。
スキャン後すぐに捨てるのが不安なら、まず紙のままで保存期間を守る運用でも問題ありません。スキャナ保存は、場所を減らしたい人向けの選択肢です。
紙で受け取った書類を、スマートフォンで撮影して、そのまま保存しているだけでは、スキャナ保存の要件を満たしているとは限りません。紙の原本を捨てるなら、要件を確認してからにしてください。要件を満たさないなら、紙の原本を保存期間のあいだ持っておくのが安全です。
インボイスの保存と、自分が発行する領収書の控え
インボイス制度の細かい発行ルールは、既存の記事に任せます。ここでは保存だけ確認します。
受け取る側(仕入税額控除を受ける場合)
国税庁のタックスアンサーNo.6625では、仕入税額控除を受けるには、課税仕入れに関する一定の事項を記載した帳簿と請求書等(適格請求書等)を保存する必要があるとされています。保存期間は、閉鎖または受領した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間で、保存場所は納税地または事業に係る事務所等です。6年目と7年目は、帳簿または請求書等のいずれか一方を保存すればよい、という記載もあります。
発行する側(登録事業者)
登録事業者が交付した適格請求書の写し(控え)や、提供した電磁的記録は、7年間の保存が必要です。電子で送った請求書は、電子取引のデータ保存のルールにもそって、データを残しておきます。請求書の書き方は請求書の書き方の記事、登録そのものはインボイス登録の記事を参照してください。
免税事業者のままの方は
登録をしていない免税事業者でも、所得税の保存期間(帳簿、請求書、領収書など)のルールは同じです。「インボイスは関係ないから」と請求書を早く処分しないように注意してください。請求書の運用全般は請求書の運用ルールの記事に整理しています。
自分が領収書を出すとき:印紙と保存
自分が発行する領収書は、金額によっては印紙税が関係します。国税庁のタックスアンサーNo.7105では、売上代金の受取書は、記載された受取金額が5万円未満なら非課税、5万円以上100万円以下なら200円とされています。営業に関しない受取書は非課税です。電子データで交付する場合は紙の課税文書にあたらない、というのが国税庁の一般的な説明です。くわしくは、印紙税 早見・判定ツールと請求書の運用ルールの記事に任せ、ここでは繰り返しません。
保存の面では、発行した領収書の控えも、請求書と同じように保存期間の対象です。領収書作成ツールでPDFにして渡すなら、渡したデータを「日付_取引先_金額」の名前で残しておくと、後から探せます。
よくある疑問と、判断に迷ったときの考え方
レシートや領収書が見つからないときは?
紛失した場合は、クレジットカードの利用明細、銀行の取引履歴、取引先のメールなどの記録を残しておくと、事実を説明しやすくなります。ただし、書類があれば当然に認められる、なければ必ず認められない、という単純な話ではありません。経費にできるかどうかは、個別の事情で判断されます。迷ったら税務署か税理士に相談してください。
クラウド会計ソフトに任せれば保存の問題はなくなる?
会計ソフトが、保存の要件を満たす機能を持っている場合はあります。ただし、ソフトの機能が自分の運用に合っているかは、利用者側で確認が必要です。受け取った請求書が会計ソフトの外にあるなら、その保存は別に考える必要があります。ソフトの提供元の案内で、電子取引への対応状況を確認してください。
廃業したあとも保存期間は続く?
保存義務は、事業をやめたからといって直ちになくなるとは限りません。この記事では、廃業後の扱いの細部は確認していません。廃業を考えている場合は、開業届・廃業届の記事とあわせて、税務署で確認してください。
保存期間が過ぎたら処分してよい?
保存期間を過ぎた書類は、法律上の保存義務は終わります。ただし、契約上のトラブルや、取引先との確認のために、念のため長く持っておく人もいます。個人情報や取引先の情報が含まれるため、処分するときは、シュレッダーやデータの完全削除など、情報が漏れない方法を選んでください。
この記事の限界と、まず何をするか
この記事の限界
- 保存期間の表は、国税庁の個人事業者向け案内にもとづいています。青色申告の「300万円以下なら5年」の適用範囲や、起算日の細部は、案内の書き方から断定できない部分があります。国税庁の原文か税務署で確認してください。
- 電子帳簿保存法は、改正されることがあります。令和7年度の税制改正で、請求書等を帳簿に自動連携する仕組みに対応した制度が新設されたことが特設サイトに示されていますが、この記事では内容を確認していません。
- 「相当の理由」が認められる具体的な基準は、確認できた範囲では示されていませんでした。
- スキャナ保存の要件は、主なものだけを挙げています。実際に使うときは、国税庁の一問一答と、使うソフトの案内で確認してください。
- 税務は一般論です。個別のケースは、税務署・税理士にご確認ください。
まとめ:まず何をするか
最初にやることは、次の4つです。
- 期間を決める:迷ったら、帳簿も書類も「7年」で運用する。インボイス登録をしている方は、請求書の控えも7年。
- 電子で受け取ったものは電子で残す:メール添付やクラウドの請求書・領収書は、印刷だけで終わらせず、データを保存する。
- ファイル名のルールを決める:「取引年月日_取引先_金額」で、受け取ったその日に保存する。必要なら事務処理規程も用意する。
- 紙のスキャンは、必要になってから:任意の制度なので、場所に困るまでは紙のままで構わない。始めるなら、要件に対応したソフトを使う。
発行側の運用は請求書の運用ルール、経費の判断は経費の記事、確定申告の流れは青色申告の記事が参考になります。不安が残る場合は、保存の仕方を一度、税理士などに確認すると安心です。