法人化の目安ツール
法人化は、税金だけでなく社会保険料の増加や会社の維持費も増えます。ここでは「生活に必要な手取りを確保したあとで、手元(または会社)に何円残るか」を、個人事業と法人で比べます。結果はあくまで目安で、法人化を決める材料の一つです。
比較の結果
- 生活に必要な手取り-
- 個人事業の手取り(全額)-
- うち生活に使う額を引いた残り-
- 法人:必要な役員報酬(年額)-
- 法人:会社が負担する社会保険料-
- 法人:税引前の会社の利益-
- 法人:法人税等の概算-
- 法人:税引後に会社に残る額-
個人の残りは自由に使えるお金です。会社に残るお金は、個人に出すとき(役員報酬の増額、退職金、配当など)に別の税・社会保険料がかかります。差額をそのまま「得」とは考えないでください。
利益の大きさで比べる(必要な手取りは同じ)
| 事業の利益(売上−経費) | 個人の残り | 会社に残る額 | 差(法人−個人) |
|---|
経費・前提は上の入力と同じ。利益だけ変えています。
法人化は「税金が減る」だけの話ではない
個人事業の所得税は、所得が増えるほど税率が上がる累進課税です。法人税は、中小法人なら年800万円以下の部分が15%、超える部分が23.2%です(国税庁)。このため利益が大きくなるほど、法人化の効果が出やすくなります。一方で、法人にすると社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が必要になり、税理士費用などの維持費も増えます。国民健康保険・国民年金と比べると、社会保険料の負担は重くなりやすいです。
このツールの考え方
「法人のほうが多く残る」かどうかは、何を基準に比べるかで変わります。ここでは、生活に必要な手取り(例:年500万円)を確保したあとに、いくら残るかで比べます。
- 個人事業:税・国民健康保険・国民年金を引いた手取りから、生活に使う額を引いた残りが、自由に使えるお金になります。
- 法人:生活に必要な手取りが残るように役員報酬を決めます。会社の利益から法人税等を引いた残りが、会社に残ります。
法人の「会社に残る額」は、会社の口座にあるお金です。個人のお金として使うには、役員報酬の増額、退職金、配当などで引き出す必要があり、そのときに税や社会保険料がかかります。
数字の例
売上1,200万円、経費200万円(利益1,000万円)、必要な手取り500万円、社会保険料率15%、会社の維持費30万円、青色申告65万円控除の場合です。個人事業の手取りは約695万円で、生活に使う500万円を引いた残りは約195万円。法人は、役員報酬を約650万円にして、会社に残る額が約176万円。差は約−19万円で、個人事業のままのほうが残ります。
利益が1,500万円になると、差は約+80万円、2,000万円では約+143万円になります。利益が大きくなるほど、法人化の効果が出てきます。ただし、これは「会社に残るお金」の差で、将来の厚生年金の上乗せ、設立の手間、決算の負担などは別です。
法人化で変わること
- 社会保険:役員報酬から健康保険・厚生年金の保険料が引かれ、会社も同額を負担します。将来の年金は、国民年金だけの場合より増えます。
- 消費税:設立から一定期間は免税になる場合がありますが、インボイス登録をしている場合や、資本金などの条件で変わります。
- 経費の幅:役員報酬の扱い、社宅、出張手当など、個人事業にはない選択肢があります。ただし、私的な支出を会社に回すことは認められません。
- 手間とコスト:設立費用、会社の決算、法人税の申告、社会保険の手続きがあります。赤字でも法人住民税の均等割がかかります。
- 役員報酬の変更:原則として、期の途中で自由に変更できません。変更の時期や理由には制限があります。
法人化を考えるタイミング
一つの目安は、利益が安定して1,000万円前後を超えてきたときです。ほかに、取引先から法人を求められたとき、人を雇う予定があるとき、事業を長く続ける・大きくする計画があるときも検討の対象になります。反対に、利益が小さいうちは、固定費と手間のほうが重くなりがちです。
このツールの限界・注意点
- 法人の実効税率は目安です。地域や事業の内容、利益の水準で変わります。入力欄で調整してください。
- 社会保険料は、標準報酬月額の等級・上限、年齢、加入する保険者で変わります。ここでは本人分・会社分を同じ率で簡易に計算しています。
- 消費税、設立費用、退職金や配当での引き出し、欠損金、小規模企業共済や経営セーフティ共済の扱いは含みません。
- 実際の判断は、税理士や社会保険労務士の試算を取ってください。
よくある質問
法人化は、利益がいくらから得になりますか?
条件によって変わります。このツールの初期値(必要な手取り500万円、社会保険料率15%、維持費30万円)では、利益が1,100〜1,200万円のあたりで個人事業とほぼ同じになり、それを超えると法人が有利になる計算です。生活費が大きい人は、もっと高い利益で逆転します。
会社に残るお金は、自由に使えますか?
会社のお金は、会社の資金として使います。個人に出すときは、役員報酬、退職金、配当などの形になり、それぞれ税や社会保険料がかかります。私的な支出を会社の経費にすることはできません。
社会保険に入ると、将来の年金は増えますか?
厚生年金に加入すると、国民年金に加えて厚生年金が上乗せされます。ただし、そのぶん保険料も増えます。このツールの金額には、将来の年金の増加分は含まれていません。
インボイスや消費税はどうなりますか?
法人にすると、新しい事業者として扱われます。設立から一定の期間は、消費税の納税義務が免除される場合があります。インボイス登録の扱いも含め、設立前に税理士や税務署で確認してください。
本ツールの計算結果は一般的な条件にもとづく概算です。個別の事情(自治体・所得の種類・各種控除など)により実際の金額は異なります。税務・法務に関する最終判断は、税理士などの専門家または国税庁・各プラットフォームの公式情報でご確認ください。